1 定期預金の金利状況
昨今の金融緩和の拡大、今年に入ってのマイナス金利政策の導入によって定期預金の金利はますます低下してきています。2016年9月現在、一般的な銀行の預入期間1年の定期預金の金利は0.01%程度となっています。2016年9月14日付けの日本銀行金融機構局による「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について」を見ると、預入期間1年の定期預金の平均年利率は3百万円未満、3百万円以上1千万円未満、1千万円以上のいずれも0.015%となっています。
しかし、ネット銀行の中には預入期間1年の定期預金金利が0.15%~0.2%のものもあります。0.01%も0.15%も利率でみると限りなく0に近いようであまり差がないように思えますが、実際には15倍も開きがあります。利息の金額で考えてみるとその違いがよくわかります。たとえば元金300万円の1年間の利息は利率が0.01%では300円(税金控除前の金額。以下同じ。)ですが、0.15%では4,500円です。
2 預け替えのハードル
このように元金300万円に対して利息が300円と4,500円という大きな差があるにもかかわらず定期預金の預け替えをしようとする人はまだまだ少ないのではないでしょうか。預け替えをしない理由としては高齢者にとってネット銀行の口座開設が難しいということがありますが、別の理由も考えられます。それは、現在の定期預金を中途解約してしまうと損をしてしまうのではないかと思って預け替えを躊躇してしまうことです。
たしかに定期預金を中途解約した場合には当初の利率より低い解約利率が適用され、満期まで継続した場合に比べて損をしてしまいます。しかし、預け替えの損得は①「現在の定期預金を満期まで継続したときの利息から現時点で解約した場合に受け取る利息との差額」と②「同じ元本で預け替え先の利率で現時点から現在の定期預金の満期時までの期間で計算される利息」を比較して判断します。
たとえば、元金300万円で預入期間1年、利率0.01%の現在の定期預金が満期日まで90日、解約利率0.005%、預け替え先の定期預金の利率が0.15%の場合で計算してみます。
- =300万円×0.01%-300万円×0.005%×(365日-90日)/365日
- =113円(円未満端数切捨て)
- =300万円×0.15%×90日/365日
- =1,109円(円未満端数切捨て)
①<②ですのでこの場合預け替えをした方が得になります。この例で計算すると現在の定期預金の満期日より13日前までは預け替えをした方が得になり、満期日より12日前以降は満期日まで現在の定期預金を継続した方が得になります。満期日まで現在の定期預金を継続した方が得になるのが思っていたよりもかなり満期日に近い時点なのではないでしょうか。
解約利率は金融機関や定期預金の期間、預入れからの経過期間などによって変わってきますのでそれによって計算の結果は多少変わってきます。しかし、それよりも金利差が15倍もあることが満期日のかなり近い時点まで預け替えをした方が有利となることに影響しています。金融の自由化が進む前までは金融機関による金利差はほとんどなかったため、定期預金の中途解約は預入れしたばかりで金利が上昇した場合を除いて一般的に損をしてしまうということは正しかったと言えます。
現在、金融機関によって金利差が10倍を超えるような状況では「中途解約は損」という過去の常識による預け替えのハードルはほとんどなくなったと言えます。預け替えの損得を計算した上で預け替えを検討してみてはいかがでしょうか。ただし、資金移動の振込手数料がかかる場合には元金があまり少額ですとその負担の方が重くなってしまいますので注意してください。
このコラムは2016年10月14日に「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。