犬山忠宏
税理士事務所/FPオフィスp.1

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専業主婦は60歳になったら国民年金の任意加入を検討しよう

2016.08.16

1     第3号被保険者と老齢基礎年金

国民年金の第3号被保険者とは、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者で20歳以上60歳未満の方が対象になります。会社員の妻で専業主婦の方や一定の年収以下のパートタイマーの方などは第3号被保険者になります。第3号被保険者の国民年金保険料は、その配偶者が加入する年金制度が負担するため自分で納付する必要はありません。

国民年金の加入期間が原則25年以上あると原則として65歳から老齢基礎年金を受給することができます。20歳から60歳までの40年間保険料を全額納付すると老齢基礎年金は満額の780,100円(平成28年4月現在)になります。保険料の免除期間がないとすると、老齢基礎年金の額は次の算式により計算されます。

老齢基礎年金額=780,100円(満額の年金額)×保険料納付月数/480月

保険料の免除期間がある場合には1/4免除から全額免除まで免除割合と免除時期によって一定の割合で年金額が減額されます。第3号被保険者であった期間は保険料納付月数としてカウントされます。

今は20歳になると国民年金に強制的に加入することになりますが、平成3年3月までは20歳以上の学生は加入が任意でした。したがって昭和46年3月以前に生まれた40代後半から50代の方で大学を卒業された方は、20歳以降の学生時代に必ずしも国民年金に加入していなかった方も多いと思います。その場合老齢基礎年金の額は満額にはなりません。20歳以降就職するまでの未加入の期間が2年であれば約39,000円、3年であれば約58,500円の減額になります。

 

2     国民年金の任意加入

自分が60歳になっても夫が会社員で厚生年金に入っていれば、そのまま第3号被保険者の期間が伸びて満額となる480月の加入期間になるのではないかと思う方もいるかもしれません。しかし、夫が厚生年金に加入していても妻は60歳以降第3号被保険者にはなれません。したがって、何もしなければ60歳で妻の老齢基礎年金は頭打ちとなります。

そこで検討したいのが国民年金の任意加入です。年金額を満額に近づけたい場合には60歳以降65歳までの間、国民年金に任意加入することができます。任意加入することで60歳以降も保険料の納付済期間を増やすことができ、老齢基礎年金の額が増えます。保険料は第1号被保険者と同額で平成28年度は月額16,260円です。年額で195,120円になりますが、1年加入すると約19,500円年金が増えますので約10年で元が取れることになります。なお、任意加入する場合には月額400円の付加保険料も納付することができ、200円×納付月数の年金が受け取れます。付加保険料を含めた保険料年額は199,920円になりますが、年金が約21,900円増えますのでこの場合には約9年2月で元が取れます。さらに、任意加入の保険料や付加保険料を夫が支払えば社会保険料控除の対象となりますので、夫の所得税や住民税を減らすことができます。(減る額は夫の所得状況等によって変わります。)実質的に元が取れる期間はさらに短くなります。

一方、任意加入には注意すべき点もいくつかあります。任意加入の保険料は原則口座振替となり、さかのぼって納付することはできません。また、通算の納付月数が480月を超えて納付することはできません。老齢基礎年金の繰り上げ受給をしている場合には任意加入することができません。

現在女性は支給開始年齢が生年月日により段階的に60歳から64歳となる特別支給の老齢厚生年金を65歳まで受給できます。この特別支給の老齢厚生年金を受給している方も国民年金の任意加入はできます。専業主婦などの方は60歳まで第3号被保険者で長い間保険料を負担しておらず、また、特別支給の老齢厚生年金を受け取り始めて今さら任意加入の保険料を払うことに抵抗があるかもしれません。しかし、平成27年簡易生命表によると60歳の女性の平均余命は28.83年で老齢基礎年金を受け取る65歳から24年近くあります。男性の方が平均余命が短いため一般的に夫が先に亡くなる確率の方が高くなります。しかし、夫が先に亡くなった場合でも自分の老齢基礎年金は遺族年金に関係なくそのまま受給することになりますので、その場合でも任意加入は無駄にはなりません。長生きリスクに備えるため、専業主婦の方は60歳になったら国民年金の任意加入を検討されることをお勧めします。

 

このコラムは2016年8月12日に「YAHOO!JAPANファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。

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