犬山忠宏
税理士事務所/FPオフィスp.1

INFORMATION

専業主婦も確定拠出年金に加入すべきか

2016.08.01

1 個人型確定拠出年金の加入範囲の拡大
確定拠出年金法の改正法が成立し、平成29年1月1日から個人型確定拠出年金の加入範囲が拡大されます。これまでの加入対象者に加えて、企業年金加入者、公務員等共済加入者、第3号被保険者(専業主婦等)などについても基本的に個人型確定拠出年金に加入することができるようになります。

 

2 確定拠出年金のメリットとデメリット
確定拠出年金は老後資金の準備をするための制度で色々なメリットがありますが、主なものとして次の4つがあります。
(1) 掛金が全額所得控除の対象となる。
所得控除が増えると課税される所得金額が減り、所得税、住民税が減ります。
(2) 運用収益が非課税になる。
運用中に得られる収益についてすべて非課税になります。
(3) 受け取り時に税制優遇がある。
一時金として受け取る場合は退職所得、年金として受け取る場合は公的年金等にかかる雑所得となり、一定の優遇措置があります。しかし、他に退職所得や公的年金等がある場合には必ずしも優遇にはならない場合もあるので注意が必要です。
(4) 投資信託のコストが安い。
投資信託の購入手数料がかからず、ランニングコストとなる信託報酬も一般に販売されているものよりも低いものが多くなっています。
一方、次の二つのデメリットもあるので注意が必要です。
(1) 原則として60歳まで払い出しができない。
急な資金需要が生じても原則として60歳までは払い出しができません。しかし、払い出しができないことは老後資金を貯める上ではメリットになるという考え方もあります。
(2) 加入時と運用期間中に手数料がかかる。
加入する金融機関によりますが、現在、加入時には2,800円程度、運用期間中は毎年2,000円から7,700円程度の手数料がかかります。

 

3 専業主婦も確定拠出年金に加入すべきか
様々なメリットがある確定拠出年金ですが、専業主婦は加入すべきでしょうか。ここでは夫の扶養者として第3号被保険者である妻について検討してみます。収入がない専業主婦の場合と130万円以下のパート収入がある場合があります。
収入がない方や所得税、住民税を払っていない方は確定拠出年金に加入しても「掛金が所得控除の対象となる」メリットを受けられません。元々税金を払っていないので税金を減らす効果を受けられないということです。しかし、「掛金が所得控除の対象となる」メリット以外にもメリットがあるのでそれでも加入した方がよいのでは?と思われるかもしれませんが、その前に確認すべきことがあります。それは夫が個人型確定拠出年金に加入しているか、またはこれから加入するかということです。夫が所得税、住民税を負担しているのであれば、まず夫が個人型確定拠出年金に加入して「掛金が所得控除の対象となる」メリットを享受すべきです。
妻が103万円以上のパート収入があり所得税、住民税を払っている方は、「掛金が所得控除の対象となる」メリットを受けられます。しかし、一般的には夫の給与の方が高く、適用される所得税の税率区分が高い場合が多いので、この場合でも夫がまず個人型確定拠出年金に加入した方が所得控除により税金が減るメリットが大きくなります。
したがって、まずは夫が個人型確定拠出年金に加入し、その掛金の拠出枠を限度額まで使うことを優先し、夫の拠出枠をすべて使ってなお家計に余裕があれば第3号被保険者である妻の加入を検討すべきでしょう。また、第3号被保険者が個人型確定拠出年金に加入した場合、掛金は月額5,000円以上23,000円以下(年額276,000円限度)となります。あまり少ない掛金では金融機関にもよりますが、掛金に対して手数料の割合が高くなってしまい効率が悪くなりますので加入を検討する場合にはこの点にも気を付けるようにしてください。

 

このコラムは2016年7月15日に「YAHOO!JAPANファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。

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