1 相続税の平成27年の改正と計算方法
平成27年の相続税の改正により、遺産に係る基礎控除額の引き下げと税率の改正が行われました。基礎控除額が従来の60%になり、最高税率が55%になったということで相続税の負担が重くなり、何か対策をすべきといったような記事や広告に触れることも多いのではないでしょうか。相続税の申告は一般的に自分の親が亡くなったときに対象になるかならないかといった程度の頻度でしか発生しないため相続税は身近な税金ではありません。相続税がいくらくらいになるのかわからないため漠然とした不安を感じる方も多いと思います。
相続税の計算方法の概略は次のとおりです。
(1) 相続財産の価額から債務及び葬式費用を差し引き課税価格を計算します。相続時精算課税の適用がある贈与財産や相続開始前3年以内に相続人等に贈与された財産がある場合にはそれらを加算します。
(2) (1)の課税価格から遺産に係る基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を差し引き課税遺産総額を計算します。この金額が0以下であれば相続税はかかりません。
(3) (2)の課税遺産総額を法定相続分であん分して法定相続分に応ずる取得金額を計算します。たとえば、相続人が配偶者と子2人であれば1/2、1/4、1/4にあん分します。
(4) (3)の法定相続分に応ずる取得金額それぞれを相続税の速算表に当てはめて相続税の総額の基となる税額を計算します。
(5) (4)の相続税の総額の基となる税額を合計した金額が相続税の総額になります。実際に各相続人が納付する税額は相続税の総額を実際の相続割合であん分し、あん分した税額から配偶者の税額軽減など各種の税額控除の額を差し引いて計算します。
2 相続人の数によって変わる相続税
配偶者は取得した相続財産の課税価格が1億6,000万円までか、配偶者の法定相続分までであれば配偶者の税額軽減の規定の適用によって相続税はかかりません。ここでは2次相続で相続人が子供だけの場合について相続税がいくらくらいになるか見てみましょう。相続人が子供2人の場合、課税価格6,000万円のとき相続税の総額は180万円(負担割合3.0%)、8,000万円のとき470万円(5.9%)、1億円のとき770万円(7.7%)、1億5,000万円のとき1,840万円(12.3%)となります。相続人が1人増えて子供3人の場合、課税価格6,000万円のとき相続税の総額は120万円(負担割合2.0%)、8,000万円のとき330万円(4.1%)、1億円のとき630万円(6.3%)、1億5,000万円のとき1,440万円(9.6%)となります。逆に相続人が1人減って子供1人だけの場合、課税価格6,000万円のとき相続税の総額は310万円(負担割合5.2%)、8,000万円のとき680万円(8.5%)、1億円のとき1,220万円(12.2%)、1億5,000万円のとき2,860万円(19.1%)となります。
相続税の総額は上記の例のとおり法定相続人の数によって変わってきます。法定相続人が1人増えるごとに基礎控除額が600万円増えることが1つの要因ですが、それ以上に相続税の計算方法が影響しています。課税遺産総額を法定相続分であん分した取得価額にそれぞれ税率をかけて算出した税額を合計したものが相続税の総額になります。相続税も所得税と同様に超過累進税率となっていますので、法定相続分であん分した取得金額が高くなると高い税率がかかる部分が発生します。子供の数が減ると法定相続分であん分した取得金額が高くなりますので高い税率がかかる部分が発生し、相続税の総額が増えることになります。
上記の相続税の計算例を見て高いと感じるか思ったほどでもないと感じるかは人それぞれですが、おおよそのイメージはつかめるかと思います。子供1人の場合は子供3人の場合の2倍前後になっており相対的に負担が大きくなります。平成27年の税率の改正は法定相続分であん分した取得金額が2億円超の場合に影響があり、上記の計算例の場合には影響はありません。自分(親)の場合法定相続人が何人になり相続税の総額がいくらくらいになるか知ってから相続税対策(納税資金対策)を検討されることをお勧めします。なお、実際の相続税の計算においては土地や建物、株式など財産の種類などによって相続財産の価額の計算方法が定められており、また小規模宅地等の特例の適否など専門的な項目も多くありますので税務署や税理士に相談されることをお勧めします。
このコラムは2018年12月7日「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。