犬山忠宏
税理士事務所/FPオフィスp.1

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所得が減ったら配当金の税金も減らせるかもしれません

2018.07.24

1     配当金や分配金の税金

上場株式の配当金や証券投資信託の分配金などを受け取る際にNISAやiDeCoなどの非課税口座では税金はかかりませんが、それ以外の場合通常15.315%の所得税(復興特別所得税を含む。以下同じ。)と5%の住民税が源泉徴収されます(大口株主を除く。)。配当金や分配金などは配当所得になりますが課税の方式として次の3つの方式があります。

(1)申告不要

上記の源泉徴収により課税関係が完結し、確定申告をする必要がない。

(2)総合課税

確定申告をして給与所得、事業所得、不動産所得などと合算されて総所得金額を構成する。そこから所得控除の金額を差し引いた金額に対して所得税は超過累進税率により、住民税は10%で課税される。

(3)申告分離課税

確定申告をして総所得金額とは別に一律所得税は15.315%、住民税は5%で課税される。(一定の順序により所得控除が適用される場合には所得控除の金額を差し引いた金額に対して課税される。)

3つの方式のうちいずれかを選択することができますが、日本国内に本店のある法人から受ける配当や分配金などは総合課税を選択した場合には配当控除という税額控除を受けることができます。配当控除の額は株式の配当については所得税が配当所得の金額の10%(復興特別所得税を含まず。)、住民税が2.8%の金額となります。証券投資信託の分配金については非株式組入割合と外貨建資産割合に応じて所得税が5~0%、住民税が1.4~0%となります。ただし、いずれも課税総所得金額等の合計額が1,000万円を超える場合にはその超える部分の金額に対する控除率は1/2になります。また、J-REITなど一定のものについては配当控除の適用はありません。

一方、上場株式等に係る譲渡損失がある場合には申告分離課税を選択するとその譲渡損失の金額と配当所得の金額との損益通算ができます。

 

2     所得に応じた選択

総合課税を選択した場合課税総所得金額に応じて所得税の適用税率が変わり、一定の配当控除の適用があります。住民税の税率が10%になることも考慮して所得税・住民税合計で源泉徴収時の税率20.315%よりも低くなるかどうかを検討します。たとえば、国内株式の配当金(大口株主でない)があり、それを含めて課税総所得金額が695万円以下の場合には総合課税を選択した方が有利となります。(証券投資信託の分配金などは配当控除の適用が変わりますので判定基準が変わります。)

従来一定の給与所得などがあり申告不要が最も有利であった方でも再雇用や退職などで課税総所得金額が減少した場合には総合課税を選択した方が有利になるかもしれません。ただし、ここで注意すべき点として健康保険料や介護保険料への影響があります。会社を退職して国民健康保険に加入した場合その保険料は住民税の所得金額に基づいて算定されます。申告不要を選択した場合にはその配当所得はこの所得金額に含まれませんが、総合課税や申告分離課税を選択した場合にはこの所得金額に含まれ健康保険料の算定の基礎となります。税金だけで考えると総合課税を選択することが有利であっても社会保険料の負担も含めて考えると申告不要の方が有利になる場合もあります。

しかし、この社会保険料への影響をなくす方法があります。従来、上記3つの課税方式のうち所得税で選択した方式が住民税でも自動的に選択されると思われていましたが、平成29年度の税制改正で所得税と異なる方式で住民税の課税が行えることが明確化されました。たとえば、所得税では総合課税を選択し、住民税では別途申告書を提出して申告不要を選択するということができます。つまり、住民税で申告不要を選択することにより税率5%のままで社会保険料への影響をなくすことができます。

実際には自分の配当所得やその他の所得、所得控除の状況と確定申告の手間、コストを考える必要があります。また、確定申告をする場合には給与や公的年金等以外の所得があれば20万円以下であっても一緒に申告をする必要がある点も注意が必要です。さらに確定申告をする場合には総合課税か申告分離課税のどちらか一方しか選択できないこと、選択は特定口座の場合口座単位であることなど一定の制限があります。所得が減る見込みの方(所得があまり多くない方も)で源泉徴収されている配当金や分配金がある方は、確定申告の間際に判断することはなかなか難しいので時間があるときに検討してみてはいかがでしょうか。

 

このコラムは2018年7月6日「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。

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