1 扶養控除
最近の大学の学費高騰に伴い奨学金を利用する方も増えていますが、学費等を賄うためにアルバイトをする学生も多いと思います。勉強に差支えのない範囲内であれば親としても子供のアルバイト収入があれば助かります。一方、通常親は16歳以上の子供があるときは就職するまで扶養親族として扶養控除を受けています。子供のアルバイトの収入が一定額を超えると扶養控除が受けられなくなってしまいますので注意が必要です。
扶養控除とは控除対象扶養親族がいる場合に受けられる一定の金額の所得控除をいいます。扶養親族の主な要件はその年12月31日の現況で配偶者以外の親族で納税者と生計を一にしており、年間の合計所得金額が38万円以下であることです。そして控除対象扶養親族とは扶養親族のうち12月31日現在の年齢が16歳以上の人です。
扶養控除の控除額は基本的に38万円ですが、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の特定扶養親族の場合は63万円、同日の年齢が70歳以上の老人扶養親族(同居老親等を除く)の場合は48万円になります。現役で合格した大学生はほぼこの特定扶養親族の年齢に該当します。特定扶養親族の場合の扶養控除の税金軽減効果をみてみましょう。所得税の場合所得金額から所得控除の額を引いた課税所得金額によって適用される税率が段階的に変わってきます。所得税率10%が適用される課税所得金額の区分の場合復興特別所得税を含めた軽減効果は、630,000円×10.21%=64,323円になります。一方、住民税の特定扶養親族の扶養控除額は45万円で税率は10%ですので軽減効果は、450,000円×10%=45,000円になります。両方合わせると109,323円にもなります。さらに高い所得税率が適用される課税所得がある場合には税金軽減効果はさらに多くなります。
2 103万円の壁
扶養親族に該当するためには年間の合計所得金額が38万円以下でないといけません。アルバイトなど給与所得だけの場合年間の収入金額が103万円以下となります。配偶者控除における控除対象配偶者と同じです。配偶者の場合は配偶者の給与収入が103万円を超えて配偶者控除が受けられなくなっても141万円未満までは段階的に配偶者特別控除が受けられます。(本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合)このため103万円を多少超えても控除額が急激に減少することはありません。しかし、扶養親族の場合には103万円を1円でも超えると扶養控除は受けられず控除額は0となってしまいます。さらに配偶者控除は38万円(住民税は33万円)ですが、特定扶養親族に係る扶養控除は63万円(住民税は45万円)ですので税額への影響はより大きくなります。「103万円の壁」は主婦のパート収入よりも大学生のアルバイト収入にとって大きな壁となっています。
主婦の場合「103万円の壁」はよく言われていますので年末に勤務の調整をする方も多いと思います。しかし、大学生の場合アルバイト収入が親の税金に関係してくるということをよく知らない方も多いのではないでしょうか。子供には給与明細を保管して年間103万円を超えないように管理するようよく説明しておくことが大切です。アルバイトのし過ぎで家計全体の手取り収入がかえって減ったり、勉強に影響が出たりしては意味がありません。
このコラムは2017年10月13日に「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。