犬山忠宏
税理士事務所/FPオフィスp.1

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個人事業者の減価償却方法の選び方

2017.07.28

1     減価償却方法の選定

事業の用に供される建物、建物附属設備、構築物、機械装置、車両運搬具、器具備品などの固定資産は一般的にはその資産の使用可能期間にわたって時の経過等によってその価値が減少していきます。そのため、その資産の種類ごとに決められた法定耐用年数にわたって一定の計算方法によってその年分の価値の減少分を計算し、その額をその事業にかかる必要経費に算入します。このようにその資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費に配分することを減価償却といいます。

減価償却の方法として一般的に定額法と定率法があります。定額法とは「取得価額×定額法の償却率」で計算する方法で、償却費の額が原則として毎年同額となります。定率法とは「未償却残高×定率法の償却率」で計算する方法で、償却費の額は初めの年ほど多く、年とともに減少します。ただし、償却費の額が一定の「償却保証額」に満たなくたった年分以後は別の計算式で計算し、毎年同額となります。

平成10年4月1日以後に取得した建物と平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物の減価償却方法は定額法のみとなっています。一方、機械装置、車両運搬具、器具備品などはこれらの種類ごとに、また事業所ごとに減価償却の方法を選定することができます。(個別の資産ごとに選定はできません。)これらの資産をその種類のものを初めて取得した場合等に一定の期限までにその償却方法を届け出ることになりますが、何も届け出をしない場合には個人事業者の方は法定償却方法として定額法が適用されます。

 

2     定額法と定率法のどちらが有利か

それでは定額法と定率法のどちらを選択した方が有利でしょうか。減価償却は原則として簿価が1円になるまで法定耐用年数にわたって償却をしていきます。法定耐用年数の全期間の減価償却費の累計額は定額法でも定率法でも「取得価額-1円」となり同じです。減価償却費が先に多く計上できる定率法の方が当初に納める税金が少なくなるので何となく有利に思えます。しかし、場合によっては定額法の方が有利になりますので注意が必要です。

所得税は超過累進税率といって課税される所得が高くなると一定の段階ごとにその高い部分にはより高い税率がかかる仕組みになっています。法定耐用年数の期間を通じて計上される減価償却費ができるだけ高い税率が適用される所得金額を減らすように計上される方法が有利になります。

たとえば、300万円の自動車を購入した場合で見てみましょう。法定耐用年数が5年であるものとした場合(構造、用途などで耐用年数は変わります。)、定額法の償却率は0.200、定率法の償却率は0.400です。1月に購入してすぐに事業の用に供した場合1年目から5年目までの減価償却費は定額法と定率法でそれぞれ次のようになります。(計算式は省略します。)

(A)定額法

(1)1年目~4年目  600,000円

(2)5年目  599,999円

(B)定率法

(1)1年目  1,200,000円

(2)2年目  720,000円

(3)3年目  432,000円

(4)4年目  324,000円

(5)5年目  323,999円

どちらも5年間で償却する償却費の累計額は2,999,999円で同じです。ここで各年の減価償却費を計上する前の事業所得の金額を5,500,000円(他の所得がないものとします。)、所得控除の額の合計額を1,600,000円だったとします。そうすると減価償却費計上前の課税所得の金額は5,500,000円-1,600,000円=3,900,000円となります。所得税の税率は課税所得金額が195万円超330万円以下の金額は10%、330万円超695万円以下の金額は20%になります。

定額法の場合3,900,000円から償却費600,000円を引くと3,300,000円となりますので、償却費は税率20%がかかる部分を減らす効果があると言えます。一方、定率法の1年目の場合3,900,000円から償却費1,200,000円を引くと2,700,000円となりますので、償却費は税率20%がかかる部分を600,000円、税率10%がかかる部分を600,000円減らす効果があります。5年間減価償却費以外の所得金額、所得控除の額が変わらないとすると、定額法の場合償却費はすべて税率20%がかかる部分を減らす効果があるのに対し、定率法の場合償却費のうち720,000円は税率10%がかかる部分を減らすことになります。したがって定額法の方が有利となります。

減価償却期間の初期に多くの所得が見込まれる場合などは逆に定率法の方が有利となる場合もあります。減価償却方法の選定を行う際には所得金額や所得控除の額の予測、固定資産の額や耐用年数、同種の固定資産の投資計画などを元に検討されることをお勧めします。

 

このコラムは2017年7月21日に「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。

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