1 給与から控除されるもの
4月から新社会人になられた方も多いと思います。「新社会人になった年は実は貯め時」というタイトルを読まれた新社会人の方は「え、なんで? 新社会人は給与もまだまだ少ないのに。」と思われるのではないでしょうか。給与からは所得税や住民税の税金と厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料が引かれます。新社会人になった年はこれらの負担が特有の事情で少し軽くなります。
2 住民税
住民税は当年分の所得に対する税額は翌年決定されて会社員の場合は翌年の6月の給与から翌々年の5月の給与で12回に分けて控除されます。新社会人は通常前年の所得がありませんので翌年の5月までは住民税は控除されません。
3 所得税
所得税は毎月の給与や賞与からその額や扶養親族の数などに応じた一定の税額が控除されます。そして1月から12月までの1年間の給与や賞与の合計額に対してその人の状況に応じた一定の所得控除を適用して1年間の所得に対する正確な税額が計算されます。この計算は会社が行い、毎月の給与や賞与から控除された税額との過不足額を12月の給与または賞与で調整します。これを年末調整といいます。
新社会人は入社前にアルバイトをしていた場合を除き通常1月から3月までは収入がありません。また、夏期の賞与も対象期間が短いため一般的に少額となります。したがって新社会人になった年は1年間を通して働いている場合に比べて収入が少なくなります。給与や賞与から控除される税額は1年間を通して働いた場合を想定した一定の額になっていますので年末調整で還付される税額が相対的に多くなります。所得税とともに控除される復興特別所得税も同様です。
4 社会保険料
毎月の給与から控除される厚生年金保険料や健康保険料は標準報酬月額に一定の保険料率をかけて計算されます。標準報酬月額は基本給、諸手当、残業代、通勤手当などを合算した月額に応じて1万円から6万円の幅で区切られた等級表に当てはめて決定されます。基本的な給与の一定幅以上の変動がなければ通常4月から6月の3ヶ月間の給与等の平均額に応じて年1回9月分から改定されます。これを定時決定と言います。
標準報酬月額に含まれる残業代について新社会人の方は入社時は平均的な見積額などの残業代を元に標準報酬月額が決定されますが、定時決定時には実際の4月から6月に支給された残業代を元に標準報酬月額が決定されます。一般的には当月行った残業時間について翌月の給与で残業代が支給されますのでほとんどの新社会人の4月の給与では残業代は0かと思います。また、入社当初は研修期間などが多い、まだ本格的な担当業務が少ないなどの理由から4月、5月は残業時間は比較的少ないかと思います。その後残業代が増えていくことを考えると最初の定時決定時の標準報酬月額は相対的に低い金額で決定されると考えられます。(標準報酬月額の等級には一定の報酬額の幅がありますので必ず低くなるとは限りませんが)したがって、新社会人の方はこれらの控除される保険料は9月分から翌年8月分までは相対的に低い額になる可能性が高いと思われます。
また、会社によってですが厚生年金保険料や健康保険料の当月分を当月の給与から控除する場合と当月分を翌月の給与から控除する場合とがあります。翌月の給与から控除する場合には入社した4月の給与からは控除されません。
5 まとめ
このように新社会人になった年は給与から控除される税金や社会保険料が少なめになります。裏を返すと2年目以降負担は重くなると思われます。新生活でいろいろと買いそろえたいものも多いと思いますが、こうした状況を頭に入れて振り込まれた給与を全額使い切ってしまわずに着実に貯蓄をしていかれることをお勧めします。
このコラムは2017年5月12日に「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。