1 確定拠出年金は保険料控除申告書で申告
「個人型確定拠出年金は掛金が全額所得控除になるから税金面でお得」という情報は聞いたことがある方も多いと思いますが、具体的に「得をするイメージ」がわかずにあまりピンとこないという方もいるのではないでしょうか。年末調整の時期でもありますので、今回は年末調整で提出する保険料控除申告書と年末調整の結果渡される源泉徴収票を使って個人型確定拠出年金の節税効果を説明してみたいと思います。
保険料控除申告書、正確には「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という用紙ですがお手元にある方は出してみてください。ない方は国税庁のHPの次のURLで見てください。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/h28_05.pdf
まず、個人型確定拠出年金の掛金は用紙の右下の「小規模企業共済等掛金控除」の「個人型又は企業型年金加入者掛金」の欄に記入します。用紙の裏を見ますと「小規模企業共済等掛金」の「控除の対象となる保険料の範囲等」の②に「確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金」と書いてありますので確認できます。次に、表面の「小規模企業共済等掛金控除」の合計の文字の横に「(控除額)」と書いてあることに注目してください。これが掛金=控除額、すなわち掛金が全額所得控除になるということを表しています。
一方、個人型確定拠出年金の比較対象となる生命保険会社等の個人年金を見てみましょう。「生命保険料控除」の「個人年金保険料」の欄に保険料を記入することになります。平成24年1月1日以後の契約のものは「新保険料等」となります。たとえば、月額20,000円、年間で240,000円の保険料を支払った場合、「(a)のうち新保険料等の金額の合計額」を書く「D」欄は240,000円となります。次に、「Dの金額を下の計算式Ⅰ(新保険料等用)に当てはめて計算した金額」を④欄に書きますので、この場合「80,001円以上」に該当して「一律に40,000円」となります。「旧保険料等」がなければ⑥欄も40,000円となり、「⑤と⑥のいずれか大きい金額」を書く「(ハ)」欄も40,000円になります。最終的に個人年金保険料としては「生命保険料控除額計(イ)+(ロ)+(ハ)」にその40,000円が集計されます。④と⑥の欄にも「(最高40,000円)」と記載されていますので、「新保険料等」の場合控除額は40,000円で頭打ちになるということがわかります。
2 源泉徴収票で節税額を計算
個人型確定拠出年金の掛金を拠出して保険料控除申告書で年末調整を受けた場合源泉徴収票で税額がどのように減るのか見てみましょう。
図表1のような金額で源泉徴収税額が計算されているとします。確定拠出年金の掛金はない場合とします。税額は③の126,000円です。
一方、同じ条件で確定拠出年金の掛金240,000円を保険料控除申告書で申告していたとすると図表2のような源泉徴収票になります。
④の「社会保険料等の金額」810,000円に240,000円がプラスされて1,050,000円となります。この欄の左上に「内」とありますが、確定拠出年金の掛金の額を含んだ小規模企業共済等掛金の額が内書きされます。また、②の「所得控除の額の合計額」1,570,000円にも240,000円がプラスされて1,810,000円になります。①-②の金額が課税される所得金額となりますので、
3,780,000円-1,810,000円=1,970,000円
を次の所得税の速算表に当てはめて計算します。
1,970,000円×10%-97,500円=99,500円
復興特別所得税が2.1%かかりますので
99,500円×102.1%=101,500円(百円未満切捨て)
となります。確定拠出年金の掛金がない場合の税額、126,000円と比べると
126,000円-101,500円=24,500円
所得税及び復興特別所得税が少なくなります。「課税される所得金額」がさらに高くなり速算表の税率が10%より高い区分になると節税額はもっと多くなります。
さらに住民税の計算においても「確定拠出年金の掛金×10%相当」の税額が減少することになりますので、上記の場合なら
240,000円×10%=24,000円
の税額が少なくなります。具体的な「得をするイメージ」がわいてきましたでしょうか。源泉徴収票をもらったら自分の場合に当てはめてみて個人型確定拠出年金の加入の検討をしてみてはいかがでしょうか。
このコラムは2016年12月9日に「YAHOO!ファイナンス NISA/投信ページ」に掲載されました。